はるさん日記:2001.12

12/1
吸引器が届いた。はるさんのオムツを取り寄せている、介護用品取り扱い事業所に聞いたら、丁度在庫があるとのことで、届けてくれた。ラッキー。
この吸引器が役立つようでは困るのだけど、一応、安心のための保険と思うことにした。高価な買い物なので夫に相談したけど、即OKで購入を決めた。
はるさんはSサイズがピッタリなんだけど、市販の紙オムツはMサイズやLサイズばかりで、Sサイズがなかなか手に入らない。大きさが合わないと尿もれしやすいので、この事業所に、我が家用のSサイズの取り寄せをしてもらっている。いつも親切にしてくれるので、3年前に介護用ベッドを購入したときから、ずっとお付き合いしている。
さーて、吸引器の使い方をマスターしなくては。
12/4
大きな箱に入ってる吸引器を持ってケアホームへ行く。明日の退所に備えて、婦長さんから吸引器の使い方の説明を受けた。初めはちょっと難しそうだったけど、何とかなりそう。
はるさんは、昼ご飯を食べて満足そう。明日はおうちに帰ろうね。
12/5
午前10時30分ケアホーム退所。長男の運転で家まで帰る。自分のベッドに落ち着くと、ホッとした顔つきになった。「はるさん、家に帰ってきてどう?」と尋ねると、「そりゃ、家がいいよー」と、これまたハッキリしたお答え。いつもより、にこにこしているように見える。また、在宅でがんばろうねー。
午後になって、看護婦さんが訪問してくれた。はるさんのバイタルチェック異常なしとのこと。胸の音もきれいだし、心臓の動きも腸の動きも順調ですって。吸引器の使い方を教わりながら、痰をひいてみた。上手にできて一安心。はるさん、苦しくなかったかな。
通販で注文しておいた介護食も届いたし、これで準備万端整ったぞ〜。
12/6
はるさんは、久しぶりのデイケアにお出かけ。3ヶ月ぶりのデイケア帰宅後、連絡帳には、「本日穏やかに過ごされました。昼食全量摂取されました。」と記入してあった。入浴日だったから、さっぱりツルリン顔のはるさんになっていた。いつものように「具合はどう?」と聞くと、「ちゅうっくらいだね!」と言った。その言い方とタイミングが絶妙だったので、私が大笑いしたら、はるさんも歯のない口をあけて、わははと笑った。
12/9
今日のデイケアの連絡帳に、排尿なしとあった。このところおシッコの回数が落ちている。なにしろ食事を食べるだけでも時間がかかり、量も少なくなっているから、水分の量が足りないかも。ゼリーで水分補給しているが、飲み込みに時間がかかるし。
12/11
夕方6時過ぎデイケアから帰ってきたはるさんに、ゼリーを食べさせていたら、少し震えている。おでこを触っても熱感はないが、念のため検温してみる。昼間のデイケア中も痰の吸引をしてもらったそうだから、少し心配…。あちゃー、38度を超えている。再度計ってみると38.8度。
病院の診察時間は終わっているので、とりあえず訪問看護ステーションに電話をした。
誤嚥性肺炎が疑われるので、夜間外来で見てもらいましょうと言われ、手配してもらった。長女に車の運転を頼み、夜の道を走り、はるさんを病院へ連れて行った。
レントゲン撮影の結果、右葉下部に肺炎を起こしているとのこと。しばらく入院と相成りました。病室で点滴してもらっているはるさんだが、「お腹が空いた」と言った。
かわいそうだけど、点滴するだけで食べられないんだよ…。
12/12
入院中に必要なものを運び、夜になってから主治医の説明を受けた。誤嚥性肺炎なので治療しながら2〜4週間様子を見ましょうとのこと。高齢なので急変することもあり得る、と付け加えられた。治療後は誤嚥を防ぐため食事摂取の方法も考えなくてはならないとのこと。
12/14
はるさんは氷まくらをあてている。熱が下がらないらしい。ずっと点滴が続いている。近づけば目を開けてこちらを見るので、意識はハッキリしているようだ。
「はるさん、早く良くなって家に帰ってくるんだよ」と何回もささやいた。呪文をかけておいたから、きっと帰って来れるよね。
以前のはるさん入院の時も、「おうちの人がたくさん面会にくると患者さんが早く直るのよ」と、看護婦さんが私に呪文をかけてくれたから。
12/15
今日はどんな具合かな。病室は6人部屋で一番奥の窓際にはるさんのベッドはある。
昨日までは、点滴2本がぶら下がり、鼻には酸素補給の管があり、水まくらも当てていた。今日は、点滴が一本あるだけ。ナースステーションで聞いてみると、熱も下がり、良くなってきたそうで、今晩から食事が出ることになっていると教えてくれた。むせずに食べることが出来ればいいんだけど。
「はるさん、ご飯の時、ゴックンと飲み込むのよ」と、耳元で何回か言い聞かせる。わかったかなぁ。
12/16
はるさんの住んでいた長野の家へ向かい、夫の運転で高速道路を走る。6年前は毎週のように通った道なので妙に懐かしい。久しぶりに見る浅間山は昨日の冷え込みで、雪化粧をして輝いていた。
さび付いた鍵を開けて玄関を入ると、家の中はひんやりしてほこりをかぶっていた。片づけ残していた写真や書類などの整理をし、ゴミをひとまとめにしたあと、近所の方に管理をお願いしてきた。
トンボ帰りで、夕方には戻って来られたので、はるさんの様子を見に病院へ寄ってみた。はるさんはベッドの背を起こしてもらい、寄りかかって座っていた。けれど、話しかけても目線があわず、あまり反応しない。看護婦さんに食事の様子を聞いたところ、3口ほど食べただけで、後は飲み込めなかったそうだ。この数日間の絶食で食べ方を忘れちゃったかなあ。
12/18
今日のはるさんは、「はるさん!」と声をかけても反応がない。目を開けているけれど、うつろで何も見ていないようだ。目線の方向へ顔を見せても反応なし。ノドがゼロゼロしている。たびたび吸引をしてもらっているようだ。昨日、長女と来たときには、もうちょっと反応があったのだけれど。
12/19
病室へ行くと、はるさんの鼻に管が入っていた。予想出来たことだけど、ちょっとショック。いよいよ経管での食事になるのか。でも、はるさんは鼻に管が入ったままで、ぐっすりすやすや眠っている。むせながら食べるより確実に胃に収まる経管の方がはるさんには、負担が少ないのかもしれない。今まで充分頑張ったものね。
12/22
はるさんが水まくらをしている。熱が出てるようだ。ゼロゼロと痰の絡みもひどくかなり心配。夫や義兄も心配そうに顔をのぞき込むが、はるさんの反応はなし。
夫、義兄と3人ではるさんの担当医からの説明を受けた。肺炎の症状は収まり、今出ている熱は、カロリー消化のための代謝熱なので、心配ないとのこと。良かった!
3人そろっているところで、今後の見通しなどを医師から聞くことができた。退院後の生活に備えていろいろ質問したあと、我が家の受け入れ態勢を考え、お正月明けの退院としていただいた。
どうやら退院できることになりました。
ご心配いただいた皆さん、ありがとうございました。
12/24
夕方、病室に行ってみると、はるさんは経管栄養で食事中だった。相変わらす痰がからんでいるようだが、顔色も良くなってきて、いつもの色白のはるさんになっていた。
12/25
珍しくはるさんが目を開いている。でも呼びかけてみても目線が合わない。まるでなにも見ていないようだ。見えていないのかと心配になってしまう。手をにぎると握り返すのは今までと同じだけど、こっちも見て欲しいなー。
12/28
はるさんが病室を移動した。今までいた所は急性期病棟。症状が安定したので、普通の内科病棟に移ることになったのだ。退院後の準備も始まるので、まずは聴診器が必要と聞き、注文してもらった。
新しい病室は高齢者ばかりの4人部屋だが、同室の方たちは、介助を受けながらも食事が摂れて居るようで、少し前までの、はるさんとの食事風景がよみがえる。
数日前に、夫が「もう一度、食べ物を味わうことができるといいね。」と言っていたのを思い出す。
12/29
婦長さんから経管のやり方を説明していただくために、夫と病院へ行った。
はるさんがはっきりと目をあけて、こちらを見つめている。「具合はどう?」と聞くと「わ・る・い」とか細い声で答えた。久しぶりにはるさんからの反応が返ってきたので嬉しくなった。夫も声を聞いて安心したようだ。
聴診器が届いていたので、婦長さんに教わりながら、早速はるさんのお腹の音を聴いてみる。管が胃にはいっていることを確かめるためだが、はじめて聴いた聴診器の音は結構大きかった。マイ聴診器を持ち、こんな経験ができるのも、はるさんのおかげです。(^_-)
夕方には、自宅から吸引機を持っていき、はるさんのベッド脇に置かせてもらった。明日から少しずつやりかたを覚えていこうっと。
12/30
今日から経管栄養の練習だ。昼に病院へ行き、看護婦さんから指導を受け、実際にやってみることになった。婦長さんが作ってくれたプリントを見ながら、痰の吸引、薬の準備などをして、聴診器でお腹の音を確かめた。針なしの注射器を使って、薬を注入したり白湯を注入したりして、今日のところは終了。
まあまあ上手くいったように思うけど、はるさんはどう思ったかなぁ。
看護婦さんが出ていったあと、いっしょに説明を聞いていた夫が「俺にもできそう」と心強い発言。うちに帰ったらいっしょにやってもらおう。ラッキー!
12/31
今日も、経管栄養のやり方を練習するため病院へ。実習している間じゅう、はるさんはベッドの中から私のことをじっと見あげている。指導してくれた看護婦さんには上手と褒められたけど、はるさんは、心配でたまらないとでも言うような感じで見ている。まるですっかりわかっているような感じだった。
大晦日を病院でむかえることになったけど、はるさんは今年もよくがんばってくれました。経管栄養がちゃんとできるように練習しますので、来年もよろしくね。

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